後悔記

今のところ、宛てのないブログです。

『オリエント急行殺人事件』を見た

 えー、映画を見に行きました。『オリエント急行殺人事件』です。

 しかし、正月に人の混み合う商業施設で映画なんて見に行くものじゃないと知った。人が多くてゆっくり飯を食うところを探すにも難儀するわ、浮かれ気分なのかマナーの悪い人間に遭遇する率が上がるわ、外は風が強くて寒いわ、腹にもたれると知っていたのについ高いパンケーキ食ってしまうわ、なぜわたしはいつもこの反省を生かせないのか。

 正月ならではの賑わいなのか、いつもは客席スカスカの印象がある映画館も、今日はかなり人が入っていた。やはり、買い物ついでに映画でも見ようかという大人客が選択するのに、安心感があるタイトルだからだろうか。

 原作はミステリーの女王アガサ・クリスティ。内容は知らなくてもタイトルだけはなんとなく聞いたことがあるという人も多そうな、世界的に有名な古典的作品。何度も映像化はされていて、オチも既に知られているけれど、知っているからこその安心感と、新作としての出来映えを確かめてみたいという、ふたつの要素で気をそそる。

 正月に見るにはちょうどよさげだな、とわたしが思ったのと同じような人たちがいたということだろう。ちなみに母は去年既に見ていたらしいが「ガラガラだった」と言っていた。タイミングだな。

 で、感想は「よく出来てるなぁ」の一言に尽きる。もうそれでお終いでいいんじゃなかろうかとすら思う。本当に、導入から最後まで映像的にも見応えがあって、緩急があってテンポもちょうどよくて、飽きずに見やすく楽しめた。

 個人的には、オリエント急行が走り去っていく姿を見て、街の人たちが手を振って見送る場面がよかった。その雑多な喧噪を抜けるとこから始まり、列車は荒涼とした冬の大自然の中を走っていく、その対比もグッとくる。これだよ、こういう映像を大画面で見たくて映画に行ってるところある。

 内容は既に知っているせいで、「どのように見せてくれるのか」というところにばかり気がいっていたから、そういう見方になったのかもしれないけれど、その欲求をしっかり満たしてくれた作品だった。最後の、ポアロが次の事件のために旅立っていく景色の寂寥感もいい。

 しかし、わたしは体調的に旅が苦手な人間なので、見ていても「ああー、こんな豪華な列車でも、昔のことだしきっと酔ったり寝付けなかったりして楽しめないだろうなぁ」と思ってしまった。そう、実際には楽しめないからこそ、こういう作品で自分の体感できない世界を見るのだ。

 と、内容にはとても満足したのだが、他の客のちょっとしたマナーが気になって終盤のいいところで集中できなかったのが惜しかった。映画はほんとこういうのは運だな、と痛感したのだった。