後悔記

今のところ、宛てのないブログです。

風の強い日は思い出す

 本日は、風がえらく強かった。テレビの天気予報で聞いてはいたが、実際に音を聞くとビビる。あれ、もしかして洗濯物、ヤバくない? と、気づいて外へ出ると、洗濯物よりも前に、エアコンの室外機のカバーが倒れているのに動揺した。

 カバー自体は金属製だが、それほど重いものでもないので、直すのは簡単だ。しかし、大半の洗濯物は無事だったが、ひとつだけ地に落ちているものがあり、無事な洗濯物も強風に煽られてちょっと危ない様子だったので、わたしは一瞬、優先順位を迷った。

 カバーが倒れていると足下が邪魔で往復しにくいが、直している間に洗濯物が飛ばされてしまったら困るし、手が汚れてしまう。「手袋どこだっけ」と考えて、「いやいや、それは後でいい!」と思い直し、とりあえず落ちている洗濯物を拾い、風に巻き上げられて物干し竿に絡みついているタオルや、端に寄ったハンガーを確保していく。

 倒れた室外機カバーをまたぎ、部屋に取りこんでホッとすると、もう手は汚れても大丈夫だと、素手でカバーを元のように立てかけたのだった。

 周囲の家を見ると、当たり前のようにどこの家も洗濯物は干されていなかった。しかし、思っていたよりは被害がなくてよかった。一度洗った大きな毛布などが、下に落ちていたのを見たときの落胆ときたらない。

 しばらくすると風は落ち着いてきたが、数年前、風で屋根が壊れたことがあったのを思い出す。いや、正確には、屋根は雪の重みで壊れたのだ。そこで我が家のリフォームをした工務店に修理の依頼をしていたのだが、これが数ヶ月経っても何の音沙汰もなかったのだった。

 そうして待っているうちに春になり、やはり今日のような、いや、今日ほどでもないが強風の日があって、そのせいで余計に損傷が広がった。端から見ても危険な様子だったのだろう。ある日、ご近所の人から通報があったと、警察の人が来た。これには参った。

 わたしは事情を説明し、既に工務店に連絡し見積もりも出して貰ったが、もう数ヶ月何の連絡もなくてこちらも困っているという事情を説明した。警察の人は、すぐに理解して帰って行った。というか、こちらが説明したらすぐに「あ、はい、わかりました」と、お開きムードになっていた。おそらく、通報されたから行かないわけにはいかなかったみたいな感じなのだろう。お疲れ様である。

 そう、そこの工務店は、リフォームしたときもそんな感じであった。待っていると、一ヶ月二ヶ月、音沙汰がない。せめて連絡ぐらいはしてくれよ、と思っていたが、リフォームを決めたのはわたしではなく親なので、そこらへんの文句は言いづらかった。

 ようやくリフォームが終わり、壁は薄くなり、身内の情緒は不安定になり、わたしは耳栓なしでは眠れなくなるとはまだ知らなかった頃、いつもうつむき加減に、ぼそぼそと要領を得ないしゃべり方をしていた担当者が最後に、この仕事をやめて前々からやりたかったことのために海外へ行くのだ、と、人が変わったようにハキハキと喋るのを見て、「あー、このお仕事そんなに苦痛でしたか……辞められてよかったですね、こっちは色々と大変だったんですけど」と、心中の苦いものを押し殺した記憶が蘇ってきたのだった。