後悔記

今のところ、宛てのないブログです。

夏の作業を思い出す

 暑いから夜中でもアイスが食べたくなるなぁ、と、つい冷凍庫にあったアイスバー最後の一本を手に取り、でもまだ五月なんだよなぁと思う。そういえば、忘れかけていたけれど、これから梅雨もくるのだった。梅雨の次に待ちかまえているであろう酷暑の存在が憂鬱すぎて、あまり梅雨のことについては考えていなかった。

 ぼんやりとテレビを見ていたら、夏場の作業用に身につける、保冷剤入りの冷却ベストの新商品というやつを紹介していた。何年か前に、炎天下の外で何時間も仕事をしていた経験から、ついその手のものには興味を示してしまう。

 現場で働いている人たちは、当然それぞれ暑さ対策をしていたし、その手の道具も色々と試してはいたのだが、結局あまり効果はなかったのだ。そして、そのベストも結局は屋外用ではなく、倉庫などの室内用として想定されていた。もうその仕事はしていないというのに、なんだかわたしはガッカリした。

 水分補給にペットボトルを何本か凍らせて持っていっても、朝の三十分ですぐに溶ける。クーラーボックスにしても、作業をしながら車で回る仕事なので、あまり大きなものは持っていけない。直射日光を浴び続けるので、作業中は長袖かアームカバーをしていないときついが、当然その分暑い。帽子やゴム手袋必須の作業なので、そっちも蒸れる。わたしは暑さで偏頭痛になる体質なので、薬を飲まないとやってられない。移動が多いので、トイレも自由には行けない。作業の合間に日陰で休んでいたり、昼食をとっていると、住民からの苦情がくる。おまけに作業は悪臭や汚れとの戦いで、こちらがいかに効率を考えていても、回収しなければならないものは平気で時間外に出されるので、そのせいでまた手間と時間がかかり、炎天下での作業は増えていく。

 あの手の仕事が、楽になることはあるのだろうか。最初はそうでもなかったのに、年が経つ毎に負担と作業が増えていった。作業中に高齢の人が倒れて亡くなったとか、精神的に病んでいて一時的にその仕事をしていた若者が結局自殺してしまったとか、まったく愉快な話を聞かなかったが。

 ただ、毎回、夏にはアイスの差し入れをくれ労ってくれるお婆さんがいて、それだけが精神的な救いだった。

 しかしその仕事にも唯一良いところはあった。それは(ただ作業をしているだけのわたしの立場では)人間関係が煩わしくないということだった。まあ、あの境遇に加えて、人間関係の難しさまで加わっていたら、さすがに保たなかっただろう。

 夏が近くなると、ついそういうことを思い出してしまうのだ。あのきつい作業、はたしてわたしの人生経験として何か実になったのか、なってないのか、自分でもいまいちよくわからないが。