後悔記

今のところ、宛てのないブログです。

夢の街

 久々に記憶に残る夢を見た。

 わたしは外に出かけていた。家からあまり遠くないところだ。ちょっと大きな道をまっすぐに南の方角に進んでいくと、そこにはわたしの見知らぬ街があった。街は栄えていて、色々な施設やお店が並んでいた。とても華やかだ。

 「自分の生活圏内に、こんな楽しそうな場所があったなんて知らなかった」と、わたしは夢の中で得をしたような気分になった。それまで、靴もなく裸足で路上を歩き続けていたことも忘れて。

 その見知らぬ街で、わたしはちょっとワクワクしながら「せっかく来たんだし、何か美味しいものを食べよう」と思った。夢の中でも食欲を忘れない。そしてなぜか、わたしはその街に、人気のスイーツ行列店があることを知っていた。なんとなく、それはかき氷だったような気がするが、記憶は曖昧だ。

 しかし行ってみると、売っていたのはかき氷ではなかった。それに、すごい行列だ。何を売っているのかと見てみると、スイーツ専門店というわけではなく、軽食と甘味と両方やっている店という感じだった。

 ところがそこに並んでいるのは、見たこともない変な菓子ばかりなのだ。見た目はシンプルで、味の想像もつかない。半透明な、麺のように細長いものや、丸い餅のようなものがあるが、それが「何」なのかわからない。原材料も不明だ。名前もすべて、聞いたことのない造語のようだ。

 こんなに人が並んでいるのだからその価値はあるのだろう。せっかく来たのだし何か買っていきたい気持ちもある。だが、それが何なのか分からないまま、この行列に並ぶのも気が引ける。わたしはそんなふうに思った。

 あとから考えると、夢の中なのに妙に生々しい思考回路である。

 その夢は、どちらかというと平和で心地のよい印象の夢だった。ストレスや不安のない、落ち着いた世界だった。しかし、食べ物にはありつけないのだ。いつもこうだ。何かを食べようとすると、必ず何かの障害がある。行列であったり、売っているものの得体の知れなさであったり、目の前での売り切れであったり、道に迷ったり。選ぼうとしたものが、いきなり消えて別のものにすり替わっていたり。

 でも、夢の街は楽しげだった。

 時計塔のある瀟洒な駅。珍しいものが陳列されている博物館。見たこともない本がたくさん並んでいる本屋。お祭のように浮かれた賑やかな景色。見るものすべてが新鮮だった。

 美味しいものは食べられなかったけど、なんとなく目が覚めて寂しい気分になってしまった。