「読解力」って何だろな?
先日、こんな記事が話題になっていた。
「ふへーん」と思いながら目を通した。たしかにちょっと気になる話題だけれど、これだけでは具体的な感想を持ちようがない。
そもそも、読解力って何なのだろう。
論理的な理解力? 語彙の知識? 文字列の認識能力? 日本語構文に対する理解? 文字に対するイメージ喚起力? 識字障害との関連性は? 文章の読みやすさ(情報伝達の上手さ)はどれだけ影響するの、しないの? どんな文章が読みやすいか理解しやすいかって、認知能力の個体差によっても違いがあるの?
そんなことをぼんやり考えていたら、以下のツイートがたまたま目に入ってきた。
相関がなかったのは、性別・得意な科目不得意な科目・一日の学習時間・スマートフォンの利用時間・読書の好き嫌い(5段階)・好きな本のジャンル・今月読んだ本の冊数・新聞購読の有無・通塾・習い事など多岐にわたります。能力値と意味のある相関があった項目は特に見当たりません。
— norico arai (@noricoco) 2017年9月23日
「はふーん」と思った。興味深い。
わたしは国語だけは得意だったタイプで、読解問題でつまずいた記憶はない。しかし実際には、読みにくい文章、わかりにくい文章、苦手な文章というものはあるし、そこに何か理由はあるなら理解したいものだ、とは常々考えている。
この問題が、解けるかな?
で、次はその読解のための問題文らしきものがツイッターに回っていたのが目に入った。こういうやつ。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
セルロースは( )と形が違う。
ほうほう、と思いながらチャレンジしてみたら、これが意外に難しかった。なので、その理由を自分なりに考えてみたのだった。
「知識」は不要か?
まず、恥ずかしいことにわたしにとっての第一の引っかかりポイントは、「やべぇ、化学の知識なんてほとんどない(忘れている)から、名詞が呪文に見える!」だった。
この文章に対して「読解問題なので知識は関係ない」と主張している人も複数見かけたけれど、いやいやいや、知識は文章読解のスムーズさに大いに関係ありますよ。単語が謎の呪文に見えるか、固有名詞の意味を理解しているか、脳内でそれを具象化しながら読み解けるかどうかは、雲泥の差ですよ。そりゃ構文さえ理解していれば、時間をかけて読み解くことはできるかもしれないけど、時差が勿体ない。
わたしも最初は「ア、アミラーゼ?」て思った。で、慌てて「いやいやいや、違う。やべー」と真剣に見直すことになった。
地道に読解してみる
で、まずは文章読解の初歩に立ち返ってみることにした。
1.主部と述部を抜き出す
文章のメイン部分。ここが理解できれば、あとはオマケのはず。
2.主部と述部以外を見る
グルコースがつながってできたデンプン
ここでようやく頭の中にデンプンとセルロースが同ジャンルだと認識できてくる。そして「同じグルコースからできていても、形が違うセルロース」という文が混乱の原因だとはっきりした。「同じグルコース」と「違うセルロース」が、対になっているように見えてしまうのだ。
3.補足する
↓
これでスッキリ。謎は解けた。
グルコースやらセルロースやらの意味はわからなくても、文から読解はできることは理解した。が、情報伝達の文章としては不親切ではある。これが「国語の読解問題ですよ」と出されたのならまだわかるが、化学の問題として出されたら「ふざけてんのか?」とは思うだろう。
分解してみる
わたしは常に「文章書けないコンプレックス」に悩んでいるので、どうすればわかりやすい文章が書けるのかは、関心がある。関心があるので、思いつきで分解してみることにした。分解してみれば、構成要素がわかる。構成要素が分かれば、再構成ができるはずなのだ。
情報量を整理してみる
- アミラーゼは、デンプンを分解するが、セルロースは分解できない。
- アミラーゼは、酵素である。
- デンプンは、グルコースがつながってできている。
- セルロースも、グルコースでできている。
- デンプンとセルロースは、形が違う。
ざっと五つの情報量が一文に含まれていることがわかる。
色分けしてみる
意味を理解していないと呪文に見えやすいカタカナ単語を色分けしてみたら、わかりやすくなるだろうか、と考えた。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
セルロースは( )と形が違う。
単語が四つあることと、出てくる回数はすぐにわかる。しかし構文は変わらないので、読解しやすさにつながるかというと疑問だ。
主部と述部で色分けしてみる
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
セルロースは( )と形が違う。
うーん……微妙。
主部と述部以外を色分けしてみる
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
セルロースは( )と形が違う。
混乱の原因だった「同じグルコースからできていても、形が違うセルロース」が浮き上がり「デンプンと同じ」とわかりやすくなるので、個人的には一番読解しやすい気がする。
図にしてみる
グルコースでできている
→ 分解できる デンプン
アミラーゼ(酵素) ⇅ 形が違う
→ 分解できない セルロース
……自分でも何やってるのかよくわからなくなってきた。いや、基礎知識がある人はたぶんこういう図式がぱっと頭に浮かぶから、読解も有利なのではないかと思ったのだ。そして問題文ではなく説明文として考えたなら、文章で説明するよりは図や表の方がわかりやすいよね、よし試してみようと思ったのだ。それだけだ。(あくまで文章読解のための図です)
自分にとってわかりやすい文にしてみる
再構成してみる。とりあえず問題文であることは無視して、文章に含まれた情報量をわかりやすくするにはどうしたらいいかしら? と自分なりに直してみたのが以下。
その一。元の文章をあまり変えず、補足してみた。
アミラーゼという酵素は、グルコースがつながってできたデンプンを分解する。しかし、デンプンと同じようにグルコースからできていても、形がちがうセルロースは分解できない 。
その二。冗長かもしれないが、文を三つ(前提・主部・説明)に区切ってみた。
デンプンとセルロースは、グルコースがつながってできている。アミラーゼという酵素は、デンプンを分解することはできるが、セルロースを分解することはできない。なぜならば、同じようにグルコースでできていても、デンプンとセルロースは形がちがうからだ。
一文一意の法則である。複文怖い。
終わりに
ちなみにこの文章、「国語の読解問題ではない」と言われているのに、「読解力を試すための文なのだから、あえて読解しにくく作っているのだ」と擁護されているのを見て、わけがわからねーなと思った。
かくもコミュニケーション(読解)とは難儀である。