後悔記

今のところ、宛てのないブログです。

タブレット

 クリスタの iPad 向けアプリが発表されたということで、軽い疎外感を味わっている自分がいる。なにしろわたしは、 iPad どころかアップル社製品どころかスマホすら持っていない人間。もちろんタブレット端末もべつに持っていない。

 クリスタというのは CLIP STUDIO PAINT というお絵かきソフトの略称であるが、今やソフトと呼ぶよりもアプリと呼ぶ方が通りがいいのだろうか? そうした言語感覚も時代の流れを反映するので、的確な言葉を選べているのか、いまいち自信がない。なんとなく、PC用のものをソフト、スマホタブレット端末用のものをアプリ、と呼ぶような気がしていたけれども、アプリはアプリケーションの略であり、ソフトとはあまり意味が変わらないはずだ。

 わたしがはじめてパソコンを使うようになったときも、最初につまずいたのがこうした単語の理解だった。なにしろ、意味は同じなのに複数の単語があったり、似て非なるものだったり、いつの間にか意味が被っていたり別物になっていたり、デジタル用語(という言葉自体適切なのかわからないが、当時はそのように解説されていた辞典でお勉強したのだ)は、覚えるのが難しかった。

 だいたい、ちょっと前までは「タブレット」と言ったら「錠剤」とか「板状」くらいの意味だったのに、わたしが今、お絵かきに使っている intuos のような機器も「タブレット」と呼ぶ。機器の総称としては「ペンタブレット」だが、それ以外のタブレット型端末がない時代は、単に「タブレット」で済んだ。それが、「液晶タブレット」というものが出てきてからは、それぞれ「液タブ」「板タブ」と区別して呼ばれるようになったが、考えてみたら、「板タブ」は意味の重複した言葉になる。

 ちょっと調べてみた。tablet は、「(原義)ものを書き付けるのに用いる携帯できる程度の大きさの板。」とあったので、やはり「板タブ」は「板状の板」というような呼び方になってしまっているわけだ。面白い。

 だから、板タブでもなく液タブでもなく、錠剤でもない、iPad のような「タブレット」は、「タブレット端末」とか「タブレットPC」とか「タブレット型デバイス」と書いた方が区別しやすいが、調べものをしていたりすると、なかには最初から「昨今のタブレットって言ったらタブレット端末のことに決まってるだろ」とばかりに、ただタブレットと表記していることもある。

 いや、広義の意味では液タブも板タブも「タブレット型端末」なのだろうが。なんだか混乱してくるので、そこは使い分けるしかない。

 こうして、時流によって言葉を使い分ける感覚は、一度その文脈から外れてしまうとなかなか理解できないので難儀なのだ。

 わたしが未だにスマホを持っていないことでナーバスになるのは、スマホ自体は持っていなくても不便はないのだが、持っていないと確実に今の時流の感覚から取り残されていくだろうということだけは、わかっているからである。