後悔記

今のところ、宛てのないブログです。

コンタクトレンズの行方

 人はときに、何をどう考えても、どうしてそんな失敗をしたのかわからないミスをする。ヒューマンエラー、奥が深い。いや、深くない。

 風呂から上がり、髪を乾かし、いつものようにコンタクトを外してケースに入れようとした。考えるまでもなく体が動く、日々のルーティンとなっている作業だ。作業と意識することすらなくなっている。

 ところが、外してケースに入れたはずのコンタクトレンズが、片方ないのだ。洗面台に落としたかと見回しても、床を見ても、服にくっついていないか(以前にそういうことがあった)と、わざわざ家族を呼んで見てもらっても、どこにもない。しまいにはゴミ箱を見たり、洗濯かごを調べたり、色々探してもみつからない。

 そもそも、手を滑らせて落としたり、持っているときに爪先で弾いてしまったような記憶もない。いつもと同じようにケースに入れたと思って見てみたら、ただ、あるはずのものがそこになかったのだ。

 レンズももう古いし、そろそろ買い換えてはどうかという話もでたなかで、わたしは考えていた。おかしい。なくしたタイミングが、まったく分からない。

 わたしはふと、ケースを見てみた。片方のレンズは、外してちゃんとケースに装着されている。もうひとつは……ひとつは……。まさかと思いつつ、レンズの入っているケースを手に取った。外してみると、なんということだろうか、ひとつのケースに、二枚のレンズが入っていたのだ。

 わかってみると、真相は実に呆気ない。わたしは「お騒がせしました」と家族に謝罪し、その場は「みつかってよかった、よかった」となった。それにしても間抜けな失敗である。

 そう、考えるまでもなく体が動いてしまうようなルーティンだからこそ、あるときたまに、ふっとこんな誤動作をすると、何が起こったのか自覚できない。

 コンタクトレンズを外してケースにしまう。その一連の流れを、もう少し細かく書くと、以下のようになっている。

  1. 右目のレンズをスポイトで外し、置いておく。
  2. 左目のレンズを外し、スポイトに付けたまま置いておく。
  3. 眼鏡をかける。
  4. 先に外して置いてある右目のレンズを、右目用のケースにしまう。
  5. スポイトにくっついたままの左目のレンズを、左目用のケースにしまう。

 今回のミスは、おそらく、右目のレンズを外したとき、なぜか左目用のケースに入れてしまっていたのだ。そしてその後、左目のレンズも同じケースに入れてしまった。まさか、一つのケースに二枚分重ねて入れられるとは思っていなかったのも盲点だった。

 こういう、左右を取り違えるミスを防ぐために、いつもは眼鏡をかけてからケースにしまう、というルーティンにしていたはずなのだが、たまにレンズを外して視界の悪いままでも「いつもやっていることだから」と油断して、そのままケースに入れてしまうことがあるのだ。

 単純なミスは慣れきった頃に起こるというのは、真実だ。一度経験すると、しばらくの間は注意をするが、それを毎日何年も同じようにつづけていれば、またいつか自分の想像もできないうっかりミスをやらかすのである。