後悔記

今のところ、宛てのないブログです。

元日早々カフェで

 元日である。

 この如何ともしがたい焦燥感と逃避の衝動をどうしてやり過ごせばいいだろうかと考えて、結局いつものカフェに飛び込むことにしたのだった。

 この前の失敗がまだ心の傷として生々しいので、財布は念入りにチェックした。中に入っている額まで確認した。足りなかったら困るから。しかし、そのときに余計なことに気づいてしまった。「……あれ? Suicaがない」

 心当たりはあった。少し前に外出したときに、母からコートを借りたのだ。そのポケットに入れっぱなしになっている可能性が高い。しかし、そのとき母は親戚を迎えに行って不在だった。だが、カフェに行くのにべつにSuicaが必須なわけではない。気にはなったが後で確認すればいいだけかと、わたしはカフェへ逃走したのだった。

 

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 しかし出掛けにこういうことがあると、ちょっと験が悪いような気になる。わたしはストレスに弱い人間なので、心残りや気がかりというものが少しでもあると、安心できない神経をしていた。 

 最初に行った目当ての店は、休みだった。事前に調べてはみたが、チェーン店なので店舗によっては営業しているらしいが、店毎の情報がなかったのだ。まあそれも想定内だったので、わたしは他の店へと向かった。そこは開いていた。しかし、それも想定内ではあったが、とても混んでいた。

 家族連れもいれば、わたしのように一人の客もいる。しばらく待って、座った席の隣の客も、中高年の一人客だった。見るとテーブルの上にかなり本格的に居座る用の荷物が積んである。この混んでいる状況で、なかなか図太い姿勢だな、と思ったけれど、わざわざ元日に店に一人で来ているのはわたしも同じだ。

 しばらくして、ちょっと嫌なことに気づいてしまった。隣の客は、さかんにズルズルと鼻を啜っているのである。実は去年の一月、わたしは外で風邪をうつされて寝込んでいる。あれはつらかった。バスの中で、やたら咳き込んでいる人がいて、マスクをしているような様子もなく、うつされたら嫌だなぁと思っていたのである。

 隣の客は、しばらくすると大きなクシャミもした。嫌な感覚はますます強くなって、読書や書きものに集中できなくなってきた。そしてまたちらりと見ると、その客が鼻をかんだらしい大量のティッシュが、レジ袋の中に入っていたのが目に入った。わたしはドン引きした。

 おい……そんな、そんな体調で、どうして正月からここに来た。しかもかなり居座る態勢で……。

 何か家にいたくない事情があるのかもしれないし、その衝動はわたしにも理解できるものではあるが、そんなばっちり風邪をひいている状態なら、家でおとなしく養生していてほしかった。去年のバスは万人の利用する交通機関だから、風邪の人が乗っていても仕方ないとは思ったけど。(しかし派手に咳き込んでいるのだからマスクくらいはしてほしかった)

 結局、わたしは何をしにここに来たのかと考えずにはいられなかった。逃避行動にも当たり外れがあって、うまく気分転換できてスッキリと頭が整理されることもあれば、裏目に出ることもある。そう、思い出すと去年風邪をうつされたあの日も、出かける前から些細なトラブルが積み重なっていて、「あー、もしかして今日は運が良くない日なのかなぁ」などと考えていたのだ。

 そうなるともうあまり長居をしたい気分でもなくなり、コーヒーを飲み終わるとわたしは家に帰ることにしたのだった。あまり気の休まらない気分転換だったが、こうしてブログのネタにすることで昇華できるならまだマシな気がするとも思いながら。

 ちなみにSuicaは予想通り、コートのポケットに入ったままだった。