メトロノーム
ふと思いついて、動画サイトで延々とメトロノームの音を聞いていた。
メトロノーム。要するにただ淡々と一定のテンポを刻むだけの音声。テレビの音や音楽を流してもいまいち気が散るし、無音もなんだかやる気起きない。そんなときには、BGMにいいんじゃないかと思ったのだ、メトロノーム。
安らぐ。聞いていると、たしかに安らぐ。つい、メトロノームを買ってしまおうかなと、通販サイトを眺める。
最初は60くらいのテンポを心地よく聞いていたのだが、聞いているうちにもう少しゆっくりと聞きたくなり、比べた結果、リラックスするには25くらいが丁度いいのではないかと思えてきた。
しかしそこで気づく。「あ、売ってるメトロノームって、だいたい40からで、25とかはないのか……」わたしは音楽には無知なのである。
こうして一時的に盛り上がった購買意欲が、ちょっと冷静になった。
べつにどうしても25でなければいけないわけではない。40のテンポもなかなか悪くない。でも、選択の幅は広い方が嬉しいじゃないですか。いや、しかしそれは本来のメトロノームに求める用途ではないのだから、多くを望むわたしが間違っているのでは? そんなふうに思えて悩む。
世の中には、わたしと同じような需要はないのだろうか。意外にあると思うのだが。それともわたしが知らないだけで、既にそういうものがあるのかもしれない。あり得る。わたしは情弱だからな。
メトロノームの音を聞き続けていると、何か似たものを思い出す。そうだ、木魚だ。安定した、一定のリズムで打たれる音。それに合わさるお経こそないけれど、聞いているとなんとなく落ち着くところも似ているかもしれない。そうでもない? よくわからない。ちなみに、お経は聞いてもまったく落ち着かない。